米中「関税戦争」再燃か:100%超の関税掛け合う異常事態へ

世界

事態の概要

2025年10月、米中間の貿易摩擦が急激にエスカレートしている。トランプ米大統領が10日、中国製品に対して100%の追加関税を課す意向を表明したことに対し、中国政府は12日に強い反発と報復を示唆。両国が互いに100%を超える関税を掛け合う「関税戦争」への再突入が現実味を帯びてきた。

発端となったのは、中国によるレアアースの輸出規制強化だ。トランプ氏はこれを批判し、11月1日から中国製品への100%追加関税を実施すると表明。これに対し中国商務省は「高関税で脅すことは、中国と付き合う正しい方法ではない」と反発し、「必ず相応の措置を講じて自国の正当な権利と利益を守る」と宣言した。

何が問題なのか

100%関税の意味
通常の関税率が数%から十数%程度であることを考えると、100%という数字は極めて異常だ。これは実質的に中国製品の価格を2倍にすることを意味し、貿易を事実上遮断する「経済制裁」に近い措置といえる。もし中国も同様の報復措置を取れば、両国間の貿易は壊滅的な打撃を受ける。

レアアースを巡る攻防
今回の対立の核心にあるのがレアアースだ。レアアースはスマートフォンや電気自動車、軍事装備などに不可欠な希少資源で、中国が世界生産の約7割を占める。中国は9日にレアアースの採掘・精錬技術の輸出規制を発表しており、これが米国の産業競争力を直撃する可能性がある。

中国側は「法律に基づいた輸出管理体制の整備」と主張するが、米国はこれを明確な対米圧力と受け止めている。

エスカレーションの連鎖
さらに深刻なのは、報復の連鎖が止まらない構図だ。中国は10日、米半導体大手クアルコムに対する独占禁止法違反の調査開始を発表。9月の米中閣僚級協議後も、米国が対中制限措置を強化したことに「経済貿易協議の雰囲気を著しく壊した」と非難している。

今後の展望と懸念

トランプ大統領は今月末に韓国で習近平国家主席との会談を予定していたが、その中止を示唆している。外交ルートでの対話の可能性が閉ざされれば、事態はさらに悪化する恐れがある。

100%を超える関税の掛け合いは、両国経済に深刻なダメージを与えるだけでなく、世界経済全体を混乱に陥れる可能性が高い。サプライチェーンの寸断、物価上昇、企業活動の停滞など、その影響は計り知れない。

中国経済はすでにデフレ懸念を抱えており、追加的な経済的打撃は避けたいところだ。一方で、「徹底抗戦」の姿勢を示すことで国内の結束を図る政治的な意図も透けて見える。

米中両国には、冷静な対話を通じた問題解決が求められる。このまま感情的な報復合戦が続けば、両国のみならず世界全体が「敗者」となる未来が待っている。

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