2025年11月現在、全国各地でインフルエンザの患者数が急増しています。例年より早いペースで流行が拡大しており、厚生労働省も注意喚起を強化している状況です。今シーズンは新型コロナウイルス感染症との同時流行も懸念されており、これまで以上に感染予防対策の徹底が求められています。
インフルエンザ流行の現状
今年のインフルエンザは10月中旬から患者数の増加が始まり、11月に入って急速に拡大しています。特に学校や保育施設での集団感染が相次いでおり、学級閉鎖や学年閉鎖を実施する施設も増えてきました。流行しているウイルスの型はA型が中心で、特にA(H3N2)型とA(H1N1)型が同時に流行している地域もあります。
全国的に見ると、北海道、東北、関東地方で患者数が多く、西日本でも徐々に増加傾向にあります。例年は12月から1月にかけてピークを迎えることが多いインフルエンザですが、今年は流行の立ち上がりが早く、医療機関では発熱外来の混雑が続いています。
なぜ今年は流行が早いのか
今年のインフルエンザ流行が例年より早い理由として、いくつかの要因が指摘されています。まず、過去数年間はコロナ対策としてマスク着用や手洗いが徹底されていたため、インフルエンザの流行が抑制されていました。その結果、集団免疫が低下し、感染しやすい状況になっています。
また、国際的な人の移動が活発化し、海外からのウイルス流入も増加しています。さらに、気候変動の影響で秋の気温差が大きくなり、体調を崩しやすい環境も流行を後押ししていると考えられています。
インフルエンザの症状と特徴
インフルエンザの典型的な症状は、38度以上の急な発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛、全身倦怠感などです。通常の風邪と比較して、症状が急激に現れることが特徴で、「昨日まで元気だったのに、今朝から急に高熱が出た」というケースが多く見られます。
咳、鼻水、喉の痛みなどの呼吸器症状も現れますが、これらは発熱から少し遅れて出現することが一般的です。小児では、中耳炎や熱性けいれんを起こすこともあり、高齢者では肺炎などの重篤な合併症のリスクが高まります。
効果的な予防対策
インフルエンザの予防には、複数の対策を組み合わせることが重要です。最も効果的な予防法は、インフルエンザワクチンの接種です。今年のワクチンは、流行が予測される4つの型に対応した4価ワクチンが使用されています。接種後、抗体ができるまでに約2週間かかるため、まだ接種していない方は早めの接種をお勧めします。
日常生活では、こまめな手洗いが基本となります。石けんを使って20秒以上かけて手を洗い、アルコール消毒液も活用しましょう。人混みや医療機関を訪れる際のマスク着用も有効です。特に、咳やくしゃみをする際は、マスクやティッシュで口と鼻を覆う「咳エチケット」を心がけてください。
室内の湿度管理も重要です。インフルエンザウイルスは低温乾燥を好むため、室内の湿度を50〜60%に保つことで、ウイルスの活動を抑制できます。加湿器の使用や、濡れタオルを干すなどの工夫をしましょう。
感染した場合の対処法
発熱や体調不良を感じたら、まず医療機関に連絡し、受診の方法を確認してください。多くの医療機関では、発熱患者専用の時間帯や入口を設けています。受診の際は、必ずマスクを着用し、公共交通機関の利用は避けましょう。
インフルエンザと診断された場合、抗インフルエンザ薬が処方されることがあります。タミフル、リレンザ、イナビル、ゾフルーザなど、複数の薬剤があり、症状や年齢、基礎疾患の有無などを考慮して選択されます。これらの薬は、発症から48時間以内に服用を開始することで、症状の軽減や期間の短縮が期待できます。
自宅療養中は、十分な休養と水分補給を心がけてください。解熱剤を使用する場合は、アセトアミノフェンが推奨されます。アスピリンは、小児のライ症候群のリスクがあるため使用を避けてください。
家族への感染予防
家族がインフルエンザに感染した場合、家庭内感染を防ぐための対策が必要です。可能であれば、患者を個室で療養させ、看護する人を限定しましょう。患者も看護者もマスクを着用し、接触後は必ず手洗いを行います。
タオルや食器の共用は避け、患者が使用したものは速やかに洗浄しましょう。部屋の換気も重要で、1〜2時間ごとに窓を開けて空気を入れ替えることをお勧めします。
学校や職場での対策
学校や職場では、集団感染のリスクが高いため、組織的な対策が求められます。発熱や体調不良の際は無理をせず、早めに休むことが大切です。「熱が下がったから」とすぐに登校・出勤するのではなく、解熱後も2日間(幼児は3日間)は自宅で療養することが推奨されています。
職場では、テレワークの活用や時差出勤により、人との接触機会を減らすことも有効です。会議室や休憩室など、共用スペースの定期的な換気と消毒も心がけましょう。
重症化リスクの高い方への注意
以下の方々は、インフルエンザが重症化しやすいため、特に注意が必要です。65歳以上の高齢者、5歳未満の乳幼児(特に2歳未満)、妊娠中の女性、慢性疾患(喘息、心臓病、糖尿病など)をお持ちの方、免疫機能が低下している方などです。
これらの方々は、予防接種を優先的に受けることが推奨されており、感染の疑いがある場合は早めに医療機関を受診してください。周囲の方々も、これらのハイリスク者を守るために、予防対策を徹底することが大切です。
新型コロナウイルスとの同時流行への備え
今年は新型コロナウイルス感染症との同時流行が懸念されています。両者は症状が似ているため、自己判断は困難です。発熱や呼吸器症状がある場合は、医療機関で検査を受け、適切な診断を受けることが重要です。
両方のワクチン接種が可能な方は、それぞれ接種することをお勧めします。インフルエンザワクチンと新型コロナワクチンは、同時接種も可能とされています。接種スケジュールについては、かかりつけ医に相談してください。
正しい情報の入手
インフルエンザに関する情報は、厚生労働省や国立感染症研究所、各都道府県の保健所などの公的機関から入手することをお勧めします。SNSなどで拡散される情報には、誤った内容が含まれることもあるため、信頼できる情報源を確認することが大切です。
地域の流行状況は、各都道府県の感染症情報センターのウェブサイトで確認できます。学校や保育施設の保護者の方は、施設からの連絡にも注意を払い、集団感染の兆候があれば早めに対応しましょう。
まとめ
2025年のインフルエンザ流行は、例年より早く始まり、今後さらなる拡大が予想されています。しかし、適切な予防対策を実施することで、感染リスクを大幅に減らすことができます。ワクチン接種、手洗い、マスク着用、換気、加湿などの基本的な対策を組み合わせ、自分自身と周囲の人々を守りましょう。
特に、高齢者や基礎疾患のある方、小さなお子様のいるご家庭では、より一層の注意が必要です。体調に少しでも異変を感じたら、無理をせず早めに休養を取り、必要に応じて医療機関を受診してください。
この冬を健康に過ごすために、一人ひとりが感染予防の意識を持ち、実践することが大切です。正しい知識と適切な対策により、インフルエンザの流行を乗り切りましょう。皆様の健康を心よりお祈りしています。
