今イランで何が起こっているのか?:ここ数年で最大規模の反政府デモと揺らぐイスラム体制

世界

2026年1月現在、イランでここ数年で最大規模の反政府デモが続いており、すでに65人以上が死亡したと報じられています。最高指導者ハメネイ師の体制が深刻な危機に直面している今、イランで何が起こっているのか解説します。

抗議デモの発端と拡大

抗議デモは2025年12月28日、首都テヘランのバザール(市場)から始まりました。発端は深刻な経済危機です。米欧の制裁を受けたイランでは、通貨リアルが史上最安値(1ドル=147万リアル)まで下落し、物価高騰に苦しむ国民の怒りが爆発しました。

デモは急速に全国100以上の都市に拡大し、当初の経済問題への不満から、イスラム聖職者による指導体制そのものへの批判に発展しました。デモ参加者は「独裁者に死を」と最高指導者ハメネイ師を直接批判し、学生たちは「この犯罪的な体制は47年にわたり、私たちの未来を人質に取ってきた」と声明を発表しました。

今回の抗議運動は2022年のマハサ・アミニ抗議運動と異なり、大都市だけでなく小都市も含めて広範囲に広がり、学生、労働者、年金生活者、女性、少数民族など幅広い層が関与しています。特筆すべきは、歴史的にイスラム共和国の同盟者であったバザール商人たちが政府から「歴史的な決別」をしたことです。

政府による弾圧

人権団体によると、2025年12月末から2026年1月9日までに少なくとも65人が死亡しました。治安部隊は実弾を発砲し、数十人が逮捕されています。政府はインターネットを大幅に制限し、1月9日には完全遮断の可能性が報じられました。

イラン司法当局はデモ参加者を「神の敵」として死刑も辞さない構えを示し、ハメネイ師は強硬な取り締まりを容認しています。さらに、イラク民兵組織から約800人がイランに派遣され、抗議活動鎮圧を支援していると報じられています。

ペゼシュキアン大統領のジレンマとトランプの圧力

2024年に当選したペゼシュキアン大統領は公約を果たせず国民の信頼を失っています。「平和的な抗議活動の憲法上の権利」を認めましたが、治安部隊への統制権はなく、実権はハメネイ師と革命防衛隊が握っています。政府当局者は「生き残りモード」にあると述べています。

トランプ米大統領は「デモ参加者を殺害するなら、米国が救出に行く」と介入を示唆しました。イラン当局は、武力鎮圧すれば米国に介入の口実を与えベネズエラと同じ運命をたどる恐れがある一方、放置すれば体制が崩壊するリスクに直面しています。英紙は、ハメネイ師のモスクワ逃亡計画を報じています。2025年のシリア・アサド政権崩壊もイランの影響力を低下させ、反体制派は「体制は弱体化している」と認識を強めています。

体制崩壊の可能性と日本への影響

イラン・インターナショナルは、イランが政権崩壊の初期段階に入った可能性があると示唆しました。抗議行動の焦点は社会改革から政権交代へと移行しており、予測市場Polymarketではハメネイ師が2026年前半までに権力の座から退く可能性が36%に上昇しました(前週は21%)。

イラン情勢の悪化は日本にも大きな影響を及ぼす可能性があります。最大の懸念は、世界の原油の約20%が通過する「ホルムズ海峡」の封鎖リスクです。封鎖の懸念が生じれば、原油価格は80ドル、最悪100ドルを突破し、インフレ再燃と「悪い円安」により国内の物価高に拍車がかかる恐れがあります。外務省は1月9日、首都テヘランを含む危険レベルをレベル3(渡航中止勧告)に引き上げました。

おわりに

イランで起こっている抗議運動は、1979年以来続くイスラム共和国体制そのものへの挑戦となっています。学生、労働者、商人など幅広い層が参加し100以上の都市に拡大したこの運動は、イラン現代史における転換点となる可能性があります。トランプ政権の圧力、シリア・アサド政権の崩壊、国内経済の悪化という三重の危機に直面するイラン体制の行方は、中東地域全体、そして日本を含む世界経済にも大きな影響を及ぼす可能性があります。私たちは歴史の大きな転換点を目撃しているのかもしれません。

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