イラン攻撃「不支持」82%——日本の世論と高市政権の苦しい外交姿勢

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朝日新聞社が2026年3月14〜15日に実施した全国世論調査(電話)で、米国のイラン攻撃を「支持しない」と答えた人が82%に達した。「支持する」はわずか9%。また、この攻撃の法的問題について明確な姿勢を示さない高市早苗首相の対応を「評価しない」と答えた人は51%で、「評価する」の34%を大きく上回った。

今回の数字が際立つのは、過去との対比によっても明らかだ。2003年3月の米国によるイラク攻撃直後の調査では、「支持する」31%・「支持しない」59%だった。今回の「支持しない」82%は、イラク戦争のときよりはるかに厳しい民意を示している。

何が起きているのか——2026年2〜3月のイラン情勢

今回の危機の出発点は、2026年2月28日(米東部時間)に実施された米国・イスラエルによるイランへの大規模軍事攻撃だ。トランプ大統領が「エピック・フューリー(壮絶な怒り)」と名付けたこの作戦で、イランの首都テヘランなどが空爆され、最高指導者ハメネイ師が死亡したとイラン国営メディアが伝えた。

イランはただちに報復に動いた。イラン革命防衛隊(IRGC)はホルムズ海峡を通過する船舶への攻撃を警告し、タンカー3隻への攻撃を表明。これを受けて日本郵船・川崎汽船を含む海運各社が相次いで通峡を停止し、海峡は3月初旬から事実上の封鎖状態に入った。

その後も緊張は連鎖的にエスカレートし、3月13日にはトランプ大統領がSNSへの投稿で、ペルシャ湾のイランの原油積み出し拠点であるカーグ島の軍事施設を空爆して「完全に破壊した」と表明。米中央軍によれば、機雷・ミサイルの貯蔵施設など90カ所以上の軍事目標を攻撃したとされる。

同日、イランの新最高指導者モジタバ・ハメネイ師も「ホルムズ海峡の封鎖を継続する」と初めて声明を発表し、米国との対決姿勢を鮮明にした。イランはアラブ首長国連邦・イラク・サウジアラビアへの無人機攻撃も続けており、戦火は中東全域に広がりつつある。

日本への直接影響

ホルムズ海峡は、日本の原油輸入の9割超が通過する「エネルギーの大動脈」だ。封鎖が続けば原油・LNGの輸入が滞り、ガソリン・電気・ガス代の急騰を招きかねない。国土交通省によれば、周辺海域で足止めされた日本関係船舶は3月9日時点で45隻に上った。日本の石油備蓄量は約250日分あるとされるため即座の生活への打撃は限定的とされるが、長期化すれば話は別だ。

高市政権の「評価差し控え」姿勢——その論理と代償

世論調査で注目されるのは、イラン攻撃への評価そのものよりも、高市首相がその攻撃の法的評価を避け続けていることへの評価だ。

高市首相は3月2日の衆院予算委員会で「地域を不安定化させる行動をやめるよう求める」とイランには自制を促す一方、米国の攻撃については「法的評価をすることは差し控える」と述べた。木原稔官房長官も「詳細な事実関係を十分把握する立場にない」としてコメントを避けた。

この背景には日米同盟関係の現実がある。トランプ大統領との良好な関係を維持することが外交上の最優先事項である以上、同盟国の軍事行動に「国際法違反の可能性がある」と公言することは政治的に難しい。政府筋は「首相は可能な限り協力したい考え」と明かすなど、訪米時にトランプ大統領から自衛隊派遣を求められる可能性についても水面下で検討を重ねてきた。

スペインのサンチェス首相が「戦争反対」と真っ向から米国を批判し、イタリアのメローニ首相も「国際法の範囲外だ」と批判するなど、欧州主要国が相次いで公式に異議を唱えるなか、日本だけが沈黙し続けるという構図が際立っている。

シンクタンク「新外交イニシアティブ」の猿田佐世代表は「トランプ氏の機嫌を損ねたくない気持ちは理解できるが、国際法違反に声を上げなければ、法規範がさらに弱まり、米国や中国が日本に違反行為をしてきても批判できなくなる。多くの国と共に声を上げるべきだ」と指摘している。

また、政府内でも一枚岩ではない。自民党の閣僚経験者は自衛隊派遣について「米国の攻撃はロシアのウクライナ侵攻と同じ『力による現状変更』で、同盟国だからと何でも協力すべきではない」と語り、石破茂前首相もフジテレビの番組で「首脳会談でイラン攻撃の合法性を確認すべきだ」と高市首相に注文をつけた。

自衛隊派遣問題——訪米が迫るなかで浮上する「踏み絵」

世論調査が実施された同時期、トランプ大統領は日本に対してホルムズ海峡の船舶護衛への艦船派遣への協力を呼びかけた。日本がどこまで対応できるかは、日米首脳会談の主要議題になる可能性がある。

法的には複数の枠組みが検討されてきた。安全保障関連法に定める「重要影響事態」が認定されれば米軍などへの後方支援(補給活動など)が可能になるが、高市首相は「現在の米軍は重要影響事態の前提となる外国の軍隊に当たらない」との認識を示した。集団的自衛権の行使に必要な「存立危機事態」についても、「現時点では該当するとの判断は行っていない」としている。

ただし、海峡に実際に機雷が敷設された場合には状況が変わる。安倍晋三元首相は2015年の安保関連法審議で、ホルムズ海峡での機雷除去は「存立危機事態に当たりうる」と国会で明言していた経緯があり、事態がさらに悪化した場合に日本がどう判断するかが問われる局面が来る可能性もある。

「82%」の重さ——過去との比較と日本の平和感覚

今回の世論調査でとりわけ際立つのが、イラン攻撃への「不支持82%」という数字の高さだ。

先述のとおり、2003年のイラク攻撃直後でも「支持しない」は59%だった。今回はそれをはるかに超え、「支持する」はわずか9%にすぎない。

この差を生む要因はいくつか考えられる。イラク戦争の場合は「大量破壊兵器の脅威」という一定の名目があった。今回はそれに比べて攻撃の正当性がより不透明であり、スペイン・イタリアなど欧州各国が「国際法違反」と批判する声が広く報じられていることも影響していると考えられる。また、日本にとってホルムズ海峡はエネルギー安全保障の生命線であり、「戦火が直接自分たちの生活に及ぶ」という実感が日本国民の間で共有されていることも無関係ではないだろう。

日本は戦後80年、平和憲法のもとで「武力行使によらない紛争解決」を外交の基軸に据えてきた。たとえ同盟国であっても、国際法上の正当性が不明確な攻撃に対して国民の大多数が支持しない——この民意は、単純な「反米」感情とは一線を画す、戦後日本の平和意識の根深さを示していると見ることができる。

日本外交が問われる本質的な問い

今回のイラン情勢が日本に突きつけているのは、「日米同盟の維持」と「国際法・多国間主義への信念」をどう両立させるかという古くて新しい問いだ。

トランプ政権が日本に自衛隊派遣の協力を要求する可能性は残る。一方で、国際法違反の可能性がある攻撃への参加が憲法9条・平和主義とどう整合するかという問題も消えない。同盟国への配慮を最優先すれば国際的な孤立を招き、原則を貫けば日米関係にひびが入るという二律背反の構造は、容易には解消されない。

世論調査の数字は政府への警告でもある。国民の圧倒的多数が「不支持」を示すなかで、訪米後に政府がどのような決断を下すのか。ホルムズ海峡情勢の行方とともに、日本外交の真価が問われる局面が続く。

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