最高裁が「IEEPA関税」に違憲判決
2026年2月20日、米連邦最高裁判所は6対3の判決で、トランプ大統領が国際緊急経済権限法(IEEPA)を根拠に課してきた包括的な関税措置は、大統領権限の範囲を超えるとして違憲と判示しました。
IEEPAはもともと国家安全保障上の緊急事態に対処するための法律ですが、トランプ政権はこれを幅広く活用し、貿易交渉における「ディール」や圧力ツールとして各国に対する関税発動に乱用してきました。最高裁の判決はこの手法に明確な歯止めをかけたものです。
トランプ大統領の即座の反応:代替関税を発表
判決を受けてトランプ氏は素早く動きました。同日20日に「通商法122条」に基づき、全世界に対して一律10%の関税を直ちに発動する布告に署名。翌21日にはSNSで最高裁判決を「ばかばかしく稚拙で極めて反米的」と痛烈に批判したうえ、さらに税率を15%へ引き上げると表明しました。
わずか1日での税率変更の表明は、敗訴という政治的打撃をなるべく早く挽回し、自らの影響力を誇示したいという焦りが透けて見えます。
なお、通商法122条に基づく関税は、議会が延長を承認しない場合は最長150日間しか適用できないという制約があります。また、トランプ氏は別の「通商法301条」に基づく新たな調査も開始する方針を明らかにしており、関税攻勢を多面的に継続する構えを見せています。
日本への影響は?
これまで米政権が昨年8月に発動した相互関税では、日本やEUなどに対して15%が適用されていました。
今回の最高裁判決で相互関税が無効となった一方、代替の一律関税が15%で適用されれば、日本にとっての実質的な負担水準はほぼ変わらないという計算になります。
一方、シリアの41%など相互関税が高かった国々にとっては税率の実質的な引き下げとなるため、そうした国からは歓迎の声も上がりました。フランスのマクロン大統領も「現状に比べて限定的」とコメントしています。
交渉カードを失ったトランプ政権の苦境
IEEPAは即座に発動できる即効性が強みで、トランプ政権はこれを外交・貿易交渉の切り札として活用してきました。しかし今回の敗訴確定によりこの手段は封じられ、交渉力の低下は避けられない状況です。
財政面でも課題があります。相互関税に比べて税率が下がる国が多い一律関税では関税収入が減少し、トランプ政権が視野に入れてきた「関税収入を原資とした国民への現金給付」構想の実現がさらに遠のくことになります。
今後の展開
秋の中間選挙を控えるトランプ政権にとって、司法の壁は政治的ダメージです。今後は通商法122条・301条などを駆使しながら関税政策を継続する見通しですが、議会承認が必要となるケースも多く、かつてのような「大統領令一本での即時発動」は難しくなります。
日本を含む各国は、米国の貿易政策の動向を引き続き注視する必要があります。関税の税率だけでなく、法的根拠や適用期間の制約にも目を向けながら、今後の交渉戦略を検討していくことが求められます。
