「国民会議」とは何か?食料品消費税ゼロをめぐる超党派協議の全貌

制度

2026年2月、政界で急速に注目を集めているキーワードがある。それが「国民会議」だ。高市早苗首相が強力に推し進めるこの会議体は、食料品の消費税率を2年間ゼロにする政策や、給付付き税額控除の制度設計を議論するための超党派の場として構想されている。しかし、参加を呼びかけられた野党の反応は冷ややかで、参政党や共産党は最初から排除される形となった。「国民会議」という名前とは裏腹に、その設計をめぐる摩擦が早くも表面化している。本記事では、国民会議とは何か、なぜ今これが問題になっているのかを詳しく解説する。

国民会議の起源――高市首相の所信表明から始まった

国民会議の構想は、2025年10月に高市早苗氏が首相に就任した直後の所信表明演説にまでさかのぼる。高市首相はこの演説の中で、社会保障の給付と負担のあり方を議論するため、超党派と有識者を交えた「国民会議」を設けると表明した。その目的は、「税と社会保障の一体改革」を実現することにあり、特に中低所得層の負担を軽減する制度の構築が念頭に置かれていた。

当初は2026年1月中の設置が目指されていたが、衆議院の解散によってその計画は一時棚上げとなった。そして2026年2月の衆院選で自民党が単独で安定議席を確保したことを受け、高市首相は改めてこの国民会議の設置に向けて動き出した。

2月9日の記者会見で首相はこう語った。「超党派で行う国民会議をできるだけ早期に設置して、2年間に限り特例公債に頼らないことを前提として、給付付き税額控除とあわせて議論をして、夏前には国民会議で中間とりまとめを行いたい」。これが現在進行中の国民会議をめぐる騒動の出発点だ。

何を議論する会議なのか?

国民会議の主要な議題は大きく2つある。

① 食料品の消費税率2年間ゼロ

物価高が続く中、家計への直接的な支援策として自民党が公約に掲げてきた政策だ。食料品に限って消費税率を2年間ゼロにするというもので、年間でおよそ5兆円規模の財源が必要になると試算されている。高市首相は、特例公債(赤字国債)に頼らず、補助金や租税特別措置の見直し、税外収入などを活用して財源を確保したうえで実現を目指す考えを示している。この消費税ゼロ措置はあくまで暫定的なつなぎの施策であり、中長期的な制度として「給付付き税額控除」が本命と位置づけられている。

② 給付付き税額控除

これが国民会議の議論における「本丸」とされる制度だ。所得税の一定額を控除し、低所得者で税額が少なく控除しきれなかった分については現金で給付するという仕組みである。所得が低いほど恩恵が大きくなるように設計されており、所得再分配や就労促進、子育て世帯の支援といった複数の目的を持つ。欧米では広く導入されている制度であり、日本でも長年議論されてきたが、これまで実現には至っていなかった。高市政権はこれを、社会保障改革の中核に据えようとしている。

政府高官によれば、国民会議は「親会議、実務者会議、有識者会議」という三層構造で構成される予定とされており、政党関係者だけでなく産業界や有識者も議論に加わる形が想定されている。

参加をめぐる混乱――誰が呼ばれ、誰が排除されたか

国民会議をめぐる最大の問題は、参加政党の選別をめぐる摩擦だ。

自民党の小林鷹之政調会長は2026年2月19日・20日にかけて、中道改革連合・国民民主党・チームみらいの幹部と個別に面会し、会議への参加を呼びかけた。参加の基準として小林氏が示したのは次の2点だ。「給付付き税額控除の制度設計に前向きであること」「消費税を社会保障の貴重な財源と認識していること」。つまり、消費税の廃止を訴える政党は最初から対象外とされた。

この結果、参政党・れいわ新選組・共産党は呼びかけを受けることすらなかった。

参政党の神谷宗幣代表は「自民党の役員に問い合わせをしたところ、『入れる気はない』という返答だった」と述べ、批判的な姿勢を鮮明にした。共産党も「最初から排除して一体、何を議論するつもりなのか」と強く反発している。中道改革連合の幹部も「一部を外した会議は『国民会議』の名に当たらない」と疑問を呈した。

呼びかけを受けた3党の反応はそれぞれ異なる。

チームみらいの安野貴博党首は「可能性があればぜひ出たい」と前向きな姿勢を示した。チームみらいは消費税減税には否定的な立場をとりながらも、給付付き税額控除には賛成しており、参加条件を満たす唯一の新興政党と見られる。

一方、中道改革連合の岡本三成政調会長は「給付付き税額控除の議論は大賛成だが、国民会議という形が適切かは納得していない。賛成の人だけで議論するのが、社会保障の屋台骨を議論するにあたって適切なプロセスなのか」と疑問を呈し、回答を保留した。国民民主党も参加の可否を保留した状態だ。

野党が抱く根本的な疑問

野党各党が国民会議に懸念を示す背景には、制度設計上の問題だけでなく、この会議の「正当性」に対する根本的な疑問がある。

まず指摘されているのが、「なぜ国会の外に別の会議を設けるのか」という問いだ。通常、重要な政策は国会の委員会や与野党協議の場で議論されるべきものだ。しかし国民会議は国会とは別個に設置される枠組みであり、なぜそれが必要なのかについての十分な説明がなされていないという批判がある。

次に、参加政党の選別問題がある。「国民会議」という名称は、広く国民を代表する議論の場を想像させるが、実際には政府・与党が事前に賛成派の政党を選んで議論するという構造になっている。これでは「国民会議」ではなく「賛成派会議」ではないかという批判は自然な反応といえる。

さらに、国民民主党の玉木雄一郎代表は「いきなり国民会議に丸投げするのではなく、まずは自民党内で検討を加速していただいて、その自民党案を早急にまとめてほしい」と注文をつけた。自民党が単独で3分の2に近い議席を持ちながら、野党との超党派議論を先行させようとする姿勢に、「自民党内の意見集約を先にすべきだ」という指摘は的を射ている面もある。

高市首相が「超党派」にこだわる理由

では、なぜ高市首相はここまで超党派の国民会議にこだわるのか。

その背景には政治的な計算がある。自民党は今回の衆院選で単独で安定多数を確保しており、理論的には野党の協力がなくても法案を可決できる。しかし、年間5兆円規模の財源を要する消費税ゼロや、社会保障制度の根幹に関わる給付付き税額控除を、与党単独で決めてしまえば「独断専行」との批判を免れない。

国民会議という超党派の枠組みを設けることで、政策の正当性と社会的合意を担保しようという意図がある。また、選挙公約として明示した政策である以上、「夏前に中間とりまとめ」という具体的なスケジュールで実績を示す必要もある。

ただし、消費税という日本の政治における最大の地雷原で幅広い合意を形成するのは容易ではない。消費税ゼロに反対が最多(約24.9%)だとする世論調査結果もあり、「食品2年ゼロ」を支持するのは2割弱にとどまるとのデータもある。

今後の焦点

国民会議の行方を左右するポイントはいくつかある。

まず、中道改革連合と国民民主党が最終的に参加するかどうかだ。両党が加わるかどうかによって、会議の「超党派性」のレベルが大きく変わる。中道が言うように「幅広い各党の参加を求めるべき」という意見が通れば、会議のあり方そのものが見直される可能性もある。

次に、財源問題がどう決着するかだ。特例公債に頼らないという制約のもとで5兆円規模の財源をどう確保するかは、最大の難関だ。補助金削減や租税特別措置の廃止には既得権益層の抵抗が予想される。

そして、夏前という目標スケジュールが実現するかどうかも焦点だ。与野党の合意形成に時間がかかれば、秋の参院選前に政策の形を示せない可能性もある。

まとめ

国民会議とは、高市早苗首相が推進する、食料品消費税ゼロと給付付き税額控除を議論するための超党派の政策協議体だ。2025年10月の所信表明で構想が示され、2026年の衆院選後に具体化が加速した。政府・与野党・有識者・産業界が参加する三層構造が想定されているが、参加政党の選別をめぐって野党から強い批判が出ており、共産党・参政党・れいわは最初から排除される形となっている。

「国民会議」という名前には、広く国民的合意を形成するという理念が込められているはずだ。しかし現実には、参加できる政党とできない政党を与党が選別し、賛成派だけで議論するという構図になっている。これが果たして真の意味での「国民会議」といえるのか――その問いに、高市首相はまだ明確な答えを示せていない。物価高に苦しむ国民にとって、食料品の消費税ゼロという政策の実現可能性よりも、むしろその議論のプロセスが公正かどうかが、今後の政治的信頼を左右するカギになりそうだ。

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