金融庁が警告する詐欺の手口——あなたの資産と口座を守るために

社会

金融庁は公式サイトの「注意喚起情報」ページで、様々な金融詐欺について継続的に注意を呼びかけている。近年の詐欺被害は件数・金額ともに過去最悪の水準を更新し続けており、手口も急速に巧妙化している。「自分は騙されない」という思い込みが最大のリスクであることを念頭に、金融庁が警告している主な詐欺の種類と手口、そして具体的な対策をまとめた。

被害の現状——数字で見る深刻さ

まず被害の規模感を把握しておきたい。

証券口座の不正アクセス・不正取引については、2025年1〜7月の累計で不正アクセスが14,069件、不正取引が8,111件に達し、不正取引の売却金額だけで約3,307億円、買付金額が約2,898億円と、わずか7ヶ月で6,200億円超の不正取引が発生した。

特殊詐欺全体(SNS型投資詐欺・ロマンス詐欺・振り込め詐欺等を含む)では、警察庁の発表によると2025年10月末時点の被害額が1,370.8億円に達し、前年の被害額(1,271.9億円)をすでに上回った。

フィッシング詐欺の報告件数は2025年10月に過去最高の約19万件を記録するなど、社会全体で被害が拡大している。

金融庁が注意を呼びかける詐欺の種類

1. SNS・マッチングアプリを使った投資詐欺

近年最も被害が拡大している手口の一つが、SNSやマッチングアプリを入り口にした投資詐欺だ。

典型的な流れは次のとおりだ。FacebookやInstagramなどSNS上に「著名な投資家の公式アカウント」や「元証券マン」を装ったアカウントが現れ、偽の投資広告をクリックさせる。その後LINEのグループへ誘導し、「先生」や「アシスタント」を名乗る人物や多数のサクラが利益を保証する投稿を繰り返す。被害者が入金すると、最初は「利益が出ている」と見せかけ信頼させ、出金しようとすると「手数料」「税金」「保証金」などを要求し続ける。最終的に入金した資金が一切戻ってこない。

マッチングアプリを通じた場合は「ロマンス詐欺」と呼ばれ、恋愛感情や信頼関係を構築した後に投資話を持ちかける。ディープフェイク(AI技術で生成された偽映像)を使ったビデオ通話で「本物らしさ」を演出するケースも確認されており、見抜くことが一段と難しくなっている。

金融庁の相談窓口には「SNSで知り合った人から誘われ投資したが、儲けを引き出せない。引き出すには追加の手数料を払えと言われている」という相談が多数寄せられている。

2. 証券会社・銀行を装ったフィッシング詐欺・不正アクセス

実在する証券会社や銀行のウェブサイトを精巧に模倣した「フィッシングサイト」に誘導し、ログインIDやパスワード、取引暗証番号などを盗み取る手口だ。

主な誘導経路は「メール」と「SMS」の2種類がある。「お客様の口座に不正アクセスが確認されました」「取引を制限しました」「本人確認のお手続きが必要です」といった不安を煽る文面で、偽サイトへのリンクをクリックさせる。偽サイトの完成度は非常に高く、本物との区別がつきにくいレベルに達している。

盗んだ認証情報を使って証券口座に不正ログインした後、口座内の株式等を売却し、その資金で国内外の小型株を購入するという手口も確認されている。被害者の口座には換金困難な銘柄だけが残る「二重の罠」が仕掛けられており、被害の発覚が遅れやすい。

3. ボイスフィッシング(企業の法人口座を狙った新手口)

2025年に入り急増している手口で、金融庁も改めて注意喚起を行っている。

銀行の担当者を装って企業に電話をかけ、「インターネットバンキングの利用に関して手続きが必要です」などと言葉巧みにメールアドレスを聞き出す。その後、あらかじめ用意した偽サイトのURLをメールで送りつけ、法人口座のログイン情報を入力させて資金を不正送金するという流れだ。

2025年11月以降だけで50社以上が被害に遭い、不正送金被害は20億円を超えた。1組織あたり1億円以上の被害が出た事例もある。地方銀行を装うケースが全国に広がっており、主に中小企業を狙っている。

4. 金融庁・金融機関を名乗る「なりすまし詐欺」

「金融庁の職員」を装って電話やメールで連絡してくる手口だ。「あなたの口座が詐欺に使われています」「マネーロンダリング対策のため確認が必要です」などと告げ、口座情報や個人情報を聞き出したり、資金を別口座に移すよう誘導したりする。

金融庁が公式に注意喚起しているポイントとして、金融庁が個人に対して電話で口座情報や資産の移動を求めることは絶対にないということを覚えておいてほしい。金融庁の偽サイトや偽SNSアカウントも確認されており、URLや公式アカウントの確認が重要だ。

5. 無登録業者による投資勧誘

金融商品取引業や暗号資産交換業の登録を受けていない業者がFX取引・暗号資産・株式投資などへの勧誘を行うケースが後を絶たない。無登録業者は法律の規制外にあるため、被害を受けても法的な保護を受けにくい。

「必ず儲かる」「あなただけに特別に教える」「元本保証」といった文言は詐欺の典型的なサインだ。

被害に遭わないための具体的な対策

投資勧誘を受けたとき

業者が金融庁に登録されているかを必ず確認する。金融庁の「免許・許可・登録等を受けている業者」は公式サイト(https://search.fsa.go.jp/)から検索できる。登録のない業者との取引は絶対に行わないことが原則だ。

「必ず儲かる」「損失は出ない」という話には根拠がなく、詐欺のサインとして受け止めるべきだ。また、SNSやマッチングアプリで知り合った相手から勧められた投資には、どれほど信頼関係があるように感じていても、極めて慎重な姿勢で臨む必要がある。

ネットバンキング・証券口座を守るために

メールやSMSに記載されたリンクは、見知った送信元からのものであっても絶対にクリックしない。金融機関のサイトにアクセスする際は、事前に公式URLをブックマークに登録し、そこからアクセスする習慣をつける。

各証券会社・銀行が提供している多要素認証(生体認証、ワンタイムパスワード、パスキーなど)を必ず有効にする。パスワードの使い回しを避け、OSやセキュリティソフトは常に最新の状態を維持する。ログイン通知・取引通知・出金通知の機能をオンにし、身に覚えのない動きがあればすぐに気づける状態にしておく。

電話による問い合わせへの対応

銀行や金融庁を名乗る電話がかかってきた場合、その場で個人情報や口座情報を伝えてはいけない。いったん電話を切り、自分で調べた公式の電話番号に折り返す。警察庁も「金融機関からの電話は一度切り、公式番号に再度かけ直すこと」を推奨している。

被害に遭ってしまったら

万が一詐欺被害に遭った場合は、時間が勝負だ。

お金を振り込んでしまった場合は、振込先の金融機関に速やかに連絡し、振込先口座の凍結を依頼する。同時に最寄りの警察署か消費生活センター(188)に相談する。

証券口座への不正ログインが疑われる場合は、直ちに利用中の証券会社に連絡してアカウントの凍結・調査を依頼する。不審なアクセスの痕跡やメールの証拠も保存しておくことが重要だ。

個人情報を渡してしまった場合は、渡した情報の種類に応じて対応が異なる。クレジットカード情報であればカード会社に、マイナンバーカードであれば警察の相談専用電話「#9110」に連絡する。

金融庁の相談窓口(金融サービス利用者相談室:0570-016811)でも、金融に関するトラブルの相談を受け付けている。

まとめ

金融庁が注意を呼びかけている詐欺の傾向を一言で表すと、**「複合型・巧妙化・高額化」**の三つのキーワードに集約される。SNSと電話とLINEを組み合わせる、ディープフェイクや生成AIを駆使する、証券口座の乗っ取りで数千億円規模の不正取引を行う——かつては「高齢者が騙される」というイメージがあった金融詐欺は、今やあらゆる世代・あらゆる規模の組織が標的になる脅威に進化している。

「自分には関係ない」という油断が最も危険だ。日頃から最新の手口を把握し、基本的な対策を習慣化することが、自分と家族の資産を守る最善の方法だ。


参考:金融庁「金融庁からのお願い・注意喚起」

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