2025年の日本の出生数は66.5万人と、10年連続で過去最少を更新する見通しです。少子化に歯止めがかからない日本ですが、世界の状況はどうなっているのでしょうか。本記事では、日本の出生率を先進国や近隣諸国と比較し、世界的な視点から日本の少子化問題を考察します。
日本の出生率の現状
日本総合研究所の試算によると、2025年の日本人の出生数は前年比3.0%減の66.5万人程度になる見通しです。統計のある1899年以降で過去最少を更新します。
国立社会保障・人口問題研究所が2023年に公表した将来推計では、2025年の出生数を74.9万人と見込んでいましたが、今回の推計はこれを8万人以上下回ります。「出生数66万人台」と想定していた2041年の状況が、およそ16年分も前倒しで現実化している計算です。
2024年時点の日本の合計特殊出生率は1.2〜1.3程度です。合計特殊出生率とは、1人の女性が一生の間に産むとされる子供の数を示す指標で、人口を維持するには2.06〜2.07が必要とされています。日本は人口維持に必要な水準を大きく下回っています。
世界の出生率ランキング
2025年のUNFPA(国連人口基金)のデータによると、世界の合計特殊出生率の平均は2.2です。世界全体では人口を維持する水準(2.07)を上回っていますが、これはアフリカ諸国の高い出生率が平均値を押し上げているためです。
出生率が高い国(2025年):チャド、コンゴ民主共和国、ソマリア(いずれも5.9)
出生率が低い国(2025年):香港・マカオ(0.7)、韓国(0.8)、シンガポール・中国(1.0)、日本(1.2)
先進国(G7)との比較
G7の合計特殊出生率(2024〜2025年データ):
- フランス:1.8〜1.9
- アメリカ:1.7
- イギリス:1.6
- ドイツ:1.58
- カナダ:1.5
- 日本:1.2〜1.3
- イタリア:1.19〜1.25
日本はG7の中で第6位と非常に低い位置です。世界227ヶ国中では212位と、最低レベルの数値です。ただし、G7すべての国が人口維持に必要な2.06〜2.07を下回っており、多くの先進国が深刻な少子化問題を抱えています。
フランスがG7の中で最も高い理由は、手厚い子育て支援、柔軟な働き方を可能にする労働環境、婚外子に対する社会的寛容さ、保育施設の充実などの充実した家族政策があるためです。
近隣諸国(東アジア)との比較
日本の近隣諸国である東アジア地域は、世界で最も出生率が低い地域となっています。
韓国:世界最低水準の0.8
韓国の合計特殊出生率は0.8と、世界で最も低い水準です(香港・マカオを除く)。20年にも及び1.3を下回っています。極端な受験競争と教育費の高騰、長時間労働と厳しい企業文化、高い住宅コスト、ジェンダー不平等の問題などが理由です。
中国:1.0という深刻な状況
中国の合計特殊出生率は1.0と、日本よりも低い水準です。長年続いた一人っ子政策の影響や、急速な経済発展に伴う価値観の変化、都市化による子育てコストの上昇などが背景にあります。
シンガポール・台湾・香港・マカオ:0.7〜1.0
これらの国・地域も0.7〜1.0という極めて低い出生率です。東アジア地域全体が、世界で最も深刻な少子化に直面しています。
なぜ先進国・東アジアの出生率は低いのか
1. ライフスタイルの多様化:女性の就労率が高まる一方、子育てと仕事を両立できる社会環境が整備されていません。
2. 経済的不安:日本で妊娠・出産を決めるにあたり最も不安に感じたこととして、「金銭面」が32.0%で最多でした。
3. 結婚から出産までの期間の長期化:日本では結婚から第1子出産までの期間が平均2.8年となり、長期化傾向が顕著です。
4. 有配偶出生率の低下:結婚している女性が産む子ども数が減少しており、若い世代の出生意欲の低下を示唆しています。
5. 東アジア特有の要因:極端な受験競争と高い教育費、長時間労働文化、高い住宅コスト、強い家族主義と子育てに対する過度な責任感、ジェンダー不平等などがあります。
世界の中の日本の位置づけ
日本の合計特殊出生率1.2は、世界227ヶ国中212位と最低レベルに近い位置にあります。ただし、日本より低い国も存在します(香港・マカオ:0.7、韓国:0.8、シンガポール・中国:1.0)。
日本は東アジアの低出生率グループに属しており、世界的に見ても最低水準のグループに入ります。イタリア(1.19〜1.25)やスペイン(1.19)など、ヨーロッパの一部の国も日本と同程度か、やや低い水準です。
今後の見通しと政策の転換
2026年は60年に一度の「丙午」にあたりますが、現代において大きな影響は限定的とみられます。ベビーカレンダーの調査によると、約8割が「迷信は気にせず、自分たちの計画やタイミングを優先したい」と回答しています。
政府は年3.6兆円規模の少子化対策を進めていますが、出生数の下げ止まりには至っていません。2025年11月には人口戦略本部を立ち上げ、「子どもを増やす」政策から「減る人口で社会を維持する」政策へ舵を切る方針です。
おわりに
日本の出生率1.2は世界的に見ても最低レベルに近く、特に東アジア地域全体が世界で最も深刻な少子化に直面しています。韓国の0.8、中国・シンガポールの1.0など、近隣諸国も同様に厳しい状況です。
一方、フランスが1.8〜1.9と比較的高い水準を保っており、充実した家族政策が一定の効果を上げています。ただし、G7すべての国が人口維持に必要な2.07を下回っており、先進国全体が少子化という共通の課題に直面しています。
日本の少子化は「日本だけの問題」ではなく、先進国や東アジア諸国が共通して抱える構造的な問題です。経済発展、女性の社会進出、価値観の多様化という時代の流れの中で、どのように子育てと仕事を両立できる社会を作るのか。世界各国の取り組みから学びながら、日本独自の解決策を見出していく必要があるでしょう。

