立憲民主党と公明党が合流して結成された新党「中道改革連合」が、1月22日の結党大会で衆議院選挙に向けた公約を正式発表しました。野田佳彦・斉藤鉄夫両共同代表のもと、「生活者ファースト」を旗印に掲げ、食料品消費税ゼロを今秋から実施するという目玉政策を打ち出しています。
中道改革連合とは何か?結党の背景
中道改革連合は、2025年10月に自民党との連立政権を解消した公明党と、野党第一党であった立憲民主党が合流して誕生した新党です。両党の衆議院議員165人(立憲144人、公明21人)が参加し、野党第一党として第51回衆議院選挙に臨みます。
新党結成の背景には、高市政権発足後の政治状況があります。公明党は企業・団体献金の規制強化をめぐり自民党と折り合えず、26年間続いた連立を解消。その後、「中道改革」を掲げて各党との対話を重ねる中で、立憲民主党との接近が加速しました。
綱領では「対立を煽り、分断を深める政治ではなく、対立点を見極め、合意形成を積み重ね、生活者ファーストの政策を着実に前へと進める中道政治の力が求められている」と強調。政治理念として「生命・生活・生存を最大に尊重する人間主義」を掲げています。
野田共同代表は党名について「右にも左にも傾かず、熟議を通して解を見いだしていく基本姿勢」を表したと説明。斉藤共同代表も「国民生活と平和を守るには穏健な中道の固まりを大きくするしかない」と訴えています。
5本柱で構成される基本政策
中道改革連合の基本政策は、以下の5つの柱で構成されています。
第1の柱:持続的な経済成長への政策転換 生活者一人ひとりの幸福を実現するため、手取り対策にとどまらない「額面が増える」経済構造の構築を目指します。
第2の柱:新たな社会保障モデルの構築 現役世代も安心できる社会保障制度への改革を推進し、世代間の公平性を重視します。
第3の柱:包摂社会の実現 教育格差の是正、ジェンダー平等、多文化共生など、選択肢と可能性を広げる社会を目指します。
第4の柱:現実的な外交・防衛政策と憲法改正論議の深化 憲法の平和主義に基づく専守防衛を基本としつつ、日米同盟を軸とした現実的な安全保障政策を追求します。
第5の柱:政治改革と選挙制度改革 政治資金の透明化を断行し、民意が正しく反映される選挙制度改革に取り組みます。
経済政策:「生活者ファースト」への転換
食料品消費税ゼロ(最大の目玉政策)
中道改革連合が掲げる最大の目玉政策は、恒久的な食料品の消費税率ゼロです。これを2026年秋から実施するとしています。野田共同代表は自民党が「2年間限定の食料品消費税ゼロについて検討を加速する」としたことに対し、「これから検討では実現はうんと先だ。判断が遅過ぎる」と批判しました。
財源確保策として、以下を列挙しています。
- 政府系ファンド(ジャパン・ファンド)の創設
- 政府が活用しきれていない基金の活用
- 剰余金の活用
行き過ぎた円安の是正
高市政権の経済政策について野田共同代表は「(日本の財政は)本当に大丈夫なのかというマーケットの懸念がある」と批判。行き過ぎた円安を是正し、食料品・エネルギーなど生活必需品の物価引き下げを目指すとしています。
住宅価格高騰対策
公約には家賃補助も盛り込まれており、住宅価格高騰対策を政策の柱の一つに据えています。
エネルギー政策
エネルギー政策では、再生可能エネルギーの最大限活用を掲げつつ、「将来的に原発に依存しない社会を目指す」としながらも、一定の条件のもとでの原発再稼働を容認しています。具体的には、安全性が確実に確認され、実効性のある避難計画があり、地元の合意が得られた原発については再稼働を認める立場です。
防災・減災への重点投資
インフラ更新、流域治水、耐震化等への重点投資を推進し、国土強靱化を図るとしています。
社会保障:現役世代も安心できる新モデル
社会保険料負担の軽減
食料品消費税ゼロとあわせて、社会保険料等の負担軽減を掲げています。中低所得者の負担軽減と格差是正に向けて、「給付付き税額控除制度」の早期導入も盛り込みました。
ベーシック・サービスの拡充
医療、介護、障がい福祉、教育など、生きていく上で不可欠な公的サービスへのアクセスを保障する「ベーシック・サービス」の拡充を推進します。
予防医療と健康寿命の延伸
予防医療の充実による健康寿命の延伸と、国民のウェルビーイング(幸福度)の向上を目指します。
働き方改革
公約には「定年廃止」や「週休3日制」といった大胆な働き方改革も盛り込まれています。高齢化が進む中で、年齢にかかわらず働ける社会の実現と、ワークライフバランスの向上を目指す方針です。
包摂社会の実現:多様性と選択肢の拡大
教育の無償化と人への投資
教育の無償化拡大と質の向上を掲げるとともに、社会人・高齢者を含む学び直し・リスキリングの制度的保障など「人への投資」を推進します。
選択的夫婦別姓の導入
高市政権が消極的な姿勢を示している選択的夫婦別姓制度について、中道改革連合は「導入」を明記しました。これは高市政権との明確な対立軸となります。
多様性の尊重
ジェンダー平等、多文化共生、気候変動対策など、多様性を尊重し、誰もが生きやすい包摂的な社会の実現を目指します。
外交・安全保障:現実路線への転換
安保法制の「合憲」明記
基本政策では、安全保障法制で定める存立危機事態での「自国防衛のための自衛権行使は合憲」と明記しました。これは立憲民主党がこれまで掲げてきた「安保法制の違憲部分の廃止」という方針からの大きな転換です。
立憲民主党の本庄知史政調会長は、公明党の岡本三成政調会長とともに記者会見でこの方針を説明。現実的な外交・安保政策を進める立場を打ち出しました。
日米同盟と平和外交
憲法の平和主義に基づく専守防衛を基本としつつ、日米同盟と平和外交を軸とした、国民の平和と安全を守る現実的な外交・防衛政策を進めるとしています。
非核三原則の堅持
高市政権下で議論が浮上している非核三原則の見直しについては、これを堅持する立場を明確にしています。
憲法改正論議への姿勢
自衛隊の位置付けを含む「憲法改正論議の深化」を盛り込み、責任ある形で憲法改正の議論を深めていく姿勢を示しています。これは従来の立憲民主党の立場からはより柔軟な姿勢への転換といえます。
政治改革:政治とカネへの終止符
企業・団体献金の規制強化
自民党派閥の政治資金問題に端を発した「政治とカネ」の問題への終止符を目指し、企業・団体献金の受け手制限規制の強化を唱えています。ただし、企業・団体献金の「禁止」ではなく、「規制強化」にとどめています。
第三者機関の創設
政治資金を監視する第三者機関を創設し、不正防止を図るとしています。
衆院解散権の制限
首相の「専権事項」とされる衆院解散権の制限も提起。恣意的な解散を防ぎ、安定した政治運営を目指す考えです。
選挙制度改革
民意を的確に反映する選挙制度への改革と、司法の要請および有識者の知見を踏まえた公正な制度への移行を掲げています。
まとめ:中道改革連合が描く日本の未来
中道改革連合の公約は、「生活者ファースト」を軸に、経済政策から社会保障、外交・安全保障、政治改革まで、幅広い分野で政策を打ち出しています。
最大の特徴は、食料品消費税ゼロを「今秋から実施」と時期を明示した点です。自民党の「検討加速」という姿勢との違いを明確にし、即効性のある生活支援策として有権者にアピールしています。
また、安保法制を「合憲」と明記し、条件付きながら原発再稼働も容認するなど、立憲民主党の従来の路線から現実路線へと大きく舵を切りました。これは公明党との合流に伴う政策調整の結果であり、政権担当能力を示す狙いがあるとみられます。
一方で、「定年廃止」「週休3日制」といった大胆な働き方改革や、選択的夫婦別姓の導入など、高市政権との明確な対立軸も打ち出しています。
この公約に対しては、左派からは安保政策や原発政策での「後退」を批判する声もあり、立憲民主党から新党に参加しない議員も出ています。一方、財源論については「政府系ファンドの創設」などを挙げるものの、具体的な道筋は不透明な部分も残ります。
2月8日投開票の衆議院選挙に向けて、中道改革連合がどこまで有権者の支持を集められるか、また他党の公約とどう違いを打ち出していくのか、今後の選挙戦が注目されます。


