トランプ政権のグリーンランド領有問題:NATO同盟国への前代未聞の圧力

世界

2026年1月、トランプ米大統領がデンマーク自治領グリーンランドの領有に強い意欲を示し、国際社会に衝撃が走っています。軍事力行使も排除しないという発言は、NATO同盟国デンマークとの間に前例のない緊張を生み出しました。本記事では、グリーンランド問題の背景、トランプ政権の狙い、国際社会の反応について解説します。

グリーンランドとは

グリーンランドは北極圏に位置する世界最大の島で、面積は約217万平方キロメートル(日本の約6倍)、人口は約5万7,000人です。デンマーク王国の自治領として広範な自治権を持ち、天然資源の管轄権を含む内政権限は自治政府に移譲されています。一方、外交・防衛はデンマーク政府が管轄し、年間約634億円の補助金を交付しています(自治政府歳入の約56%)。

戦略的重要性

グリーンランドが注目される理由は主に3点です。第一に、軍事・安全保障上の要衝として、北極海と北大西洋の間に位置し、ミサイル早期警戒の拠点となっています。第二に、温暖化で北極海航路の実用化が近づき、その要衝としての価値が高まっています。第三に、レアアース(希土類)やウランなど豊富な天然資源が埋蔵されており、米地質調査所はレアアース埋蔵量を150万トン(未開発地域で世界最大規模)と推定しています。

トランプ政権の動き

トランプ大統領のグリーンランド取得構想は、第1次政権時の2019年に遡ります。当時デンマーク首相に「馬鹿げている」と一蹴されました。

第2次政権では、2025年11月の「国家安全保障戦略」で「西半球」での米国覇権を目指す方針を打ち出し、グリーンランドをその範囲に含めました。2026年1月には発言が過熱し、「国家安全保障のためにグリーンランドが必要」(1月4日)、「米軍の活用も選択肢」(1月6日)、「所有権が必要」(1月9日)と発言。1月17日には領有に反対する欧州8カ国に追加関税(2月から10%、6月から25%)を発表しました。

トランプ政権の狙いは、対中ロ安全保障(北極圏でのロシア・中国の活動への警戒)、レアアース確保(中国依存からの脱却)、資源ビジネス(実業家からの働きかけ)の3点と見られています。

国際社会の反応

デンマーク・グリーンランドの反発

デンマークのフレデリクセン首相は「米国がNATO加盟国を攻撃すれば、NATOの終焉を意味する」と警告。グリーンランド首相も「もううんざりだ」と反発しました。世論調査では住民の85%が米国領有に反対しています。

欧州諸国の連帯

仏独伊など7カ国首脳は共同声明で米国を牽制。1月15日には独仏など4カ国がグリーンランドに軍要員を派遣し、デンマーク軍との合同演習を表明しました。

NATOへの影響

北大西洋条約第5条では、加盟国への攻撃は全体への攻撃とみなされます。米国がデンマークを攻撃すれば、理論上、他の加盟国は米国と対峙することになり、NATOは機能不全に陥ります。第2次大戦後の安全保障秩序の根幹が揺らぐ事態です。

おわりに

トランプ政権のグリーンランド領有構想は、国際法や主権原則への重大な挑戦です。デンマーク政府は「グリーンランドは売り物ではない」と明言し、住民も「デンマーク人にも米国人にもなりたくない」と訴えています。

同盟国への威圧は、NATOが守る「自己決定の原則」を損ないます。約5万7,000人の住民の意思がどれだけ尊重されるか——この問題は国際秩序の根幹に関わります。

2月の追加関税発動、グリーンランド政局、NATO内部の亀裂がどこまで深まるか。北極圏をめぐる国際情勢から目が離せない状況が続くでしょう。

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