長期固定金利住宅ローンを徹底解説──フラット20・35・50の違いからメリット・デメリット、諸外国との比較まで

制度

マイホーム購入を検討する際、最も悩むのが「住宅ローンをどう組むか」という問題です。特に「変動金利」と「固定金利」のどちらを選ぶべきかは、多くの人が直面する大きな選択です。

今回は、長期固定金利住宅ローンについて、フラット20・35・50の違い、メリット・デメリット、変動金利との比較、さらには諸外国の事情まで、詳しく解説します。

長期固定金利住宅ローンとは?

基本的な仕組み

長期固定金利住宅ローンとは、借入期間の金利が固定され、資金の受取時に返済終了までの借入金利と返済額が確定する住宅ローンです。

日本で最も代表的な長期固定金利住宅ローンがフラット35です。フラット35は、民間金融機関と住宅金融支援機構が提携して提供する最長35年の全期間固定金利の住宅ローン Flat35となっています。

フラット35の特徴的な仕組み

住宅金融支援機構は、フラット35を取扱っている民間金融機関から住宅ローン(フラット35)を買い取り、担保とする債券を発行することで長期の資金調達を行い、民間金融機関が長期固定金利の住宅ローンを提供するしくみを支えています Rakuten Bank

この仕組みにより、民間金融機関単独では難しい長期固定金利ローンの提供が可能になっているのです。

フラット20・35・50の違い

長期固定金利住宅ローンには、返済期間によって3つのタイプがあります。それぞれの特徴を見ていきましょう。

フラット20:短期返済で金利優遇

フラット20とは、フラット35のうち15年以上20年以下の借入期間を選択していただく場合をいいます。月々の返済に余裕がある場合、借入期間を15年以上20年以下に設定することで、21年以上の場合より低い金利で利用できます Abicnet

フラット20が向いている人

  • 住宅建て替えなどで資金計画が少なく済む方
  • 既に土地を所有しているので、住宅資金は少なくても良い方
  • 自己資金を多めに利用し、借入比率を抑えることができる方
  • 子育てが終わった共稼ぎ夫婦で、定年退職までの期間にローンを払い終えたい方

フラット20は、返済期間が短い代わりに金利が優遇されています。早期に完済できるため、利息負担が少ない点がメリットです。月々の返済額は高い一方で総返済額を抑えられるため、返済余力がある方に向いています Home4u

フラット35:標準的な長期ローン

フラット35は、15年超から35年以下の借入期間で利用できる、最も一般的な長期固定金利住宅ローンです。新築住宅・中古住宅の購入、住宅の建築および住宅ローンの借り換えにも使うことができます。

融資金額と条件

  • 100万円以上8,000万円以内(1万円単位)
  • 申込時の年齢が満70歳未満
  • 年収に占める返済負担率が、年収400万円未満なら30%以下、400万円以上なら35%以下

フラット50:超長期返済で月々の負担を軽減

フラット50とは、長期優良住宅を取得する場合に利用できる、最長50年の全期間固定金利の住宅ローンです。一般的な住宅ローンよりも借入期間が長い分、月々の返済額を抑えることができます Sbi-efinance

フラット50の特徴 最長50年の借入期間を選択できるのは、申込時に30歳未満の人が対象です。30歳以上の人は、「80歳-申込時の年齢(1年未満切上げ)」が借入期間の上限となります Sbi-efinance

例えば、申込時の年齢が35歳であれば、借入期間は最長44年となります。

対象となる住宅 2025年10月からは対象が拡大され、長期優良住宅に加えて、予備認定マンション、管理計画認定マンションの取得でも使えるようになりました Abicnet

金利引継特約 フラット50の場合は将来的に住宅を売却する際にも、ローンを引き継ぐことができるため、将来売却する可能性もある場合は、その手段の範囲が広がります Abicnet

3つの比較:返済シミュレーション

3,000万円を借入れした場合、フラット35だけの場合は約9.2万円、フラット20だけの場合は約14.2万円 Kakakuの月々返済となります。

フラット50の場合、月々の返済額はさらに抑えられますが、借入期間が長期化すると月々の返済額に占める利息の割合が増加し、元金の償還が遅くなるため、総返済額が増加します Sbi-efinance

ダブルフラット:組み合わせる選択肢

返済期間の異なるフラットを組み合わせる「ダブルフラット」という方法もあります。

フラット35と「フラット20」を組み合わせて借入れした場合、当初20年間は約11万円、21年目以降は約6.2万円です Kakaku

ダブルフラットは、将来の返済額を抑えたい人向きです。例えば、「子どもの教育費が増える頃から毎月返済額を少なくしたい」人は、1つを子どもが高校生になるまでの期間に。「定年退職までは多く支払い、その後の返済額は少なくしたい」場合には1つを60歳までにする。このように、ライフプランによって設定すると良いでしょう Kakaku

長期固定金利のメリット

メリット1:返済計画が立てやすい

固定金利の最大の特徴は「毎月の返済金額が上がらないこと」で、将来住宅ローンの金利相場が上昇しても、借入時の金利がずっと適用されるため、家計の見通しを立てやすくなります SBI Shinsei Bank

30年、35年、さらには50年という長期にわたる返済計画を、最初から最後まで確実に立てられることは、大きな安心材料です。

メリット2:金利上昇リスクからの保護

住宅ローンの固定金利では金利が変動しないため、毎月の返済額が一定で変わらないことがメリットです。家計の見通しを立てやすいため、住宅ローン返済と並行しながら、教育資金や老後資金の貯蓄を計画的に行えます Am-expo

特に、これから子育てにお金がかかる世帯や、長期的なライフプランを重視する人にとって、この安定性は重要です。

メリット3:団信加入が任意

民間の金融機関が提供する住宅ローンでは団体信用生命保険への加入が必須となっていますが、フラット35では加入が任意です。そのため、健康状況上の理由で団体信用生命保険への加入ができない人でも住宅ローンが利用できる Recruit Finance点もメリットといえます。

メリット4:保証料不要

フラット35では保証料が不要です。民間の住宅ローンでは保証料が必要になるケースが多いため、初期費用を抑えられる点もメリットです。

メリット5:金利引下げ制度の充実

フラット35には、子育て世帯や省エネ性能の高い住宅を購入する場合など、さまざまな金利引下げ制度があります。

ポイント制度が新しくなり、これまで最大年0.5%だった金利の引き下げ幅が年1%に拡充されます。子育てプラスを利用する場合は、6年目以降も年0.25%の金利引き下げが適用されます Recruit Finance

メリット6(フラット50):借入可能額が増える

フラット50の大きなメリットは、返済期間を長く設定できるため月々の返済額が抑えられるところです。フラット50を活用すれば年間の返済額が減らせるので借入可能額の幅が広がります Lead-home

長期優良住宅は魅力的ですが価格が高額になり、手が届かないと感じる方も、フラット50なら購入が現実的になる可能性があります。

長期固定金利のデメリット

デメリット1:当初の金利が高い

住宅ローンを契約する時点では、固定金利は変動金利よりも通常、高く設定されています Rokin

この金利差は無視できない大きさで、現在では1%以上の差があることも珍しくありません。

デメリット2:金利低下の恩恵を受けられない

契約した時点から基準金利が下がった場合は、変動金利は引き下げられる一方、固定金利は契約時のままで据え置かれます Rokin

金利が下落局面では、固定金利を選んだことが不利に働く可能性があります。

デメリット3:総返済額が多くなる可能性

金利が上昇しなかった場合、変動金利よりも総返済額が多くなります。

例えば、借入金額3,500万円、借入期間35年の住宅ローンで、変動金利が完済まで変化しなかったとしましょう。適用金利が年0.775%の変動金利型であれば、総返済額は約3,997万円です。これに対し、適用金利が年1.820%の固定金利型では、総返済額は約4,734万円となり、固定金利のほうが約737万円多く返済しなければなりません Yamanashi Bank

デメリット4:途中での金利タイプ変更が困難

固定金利特約期間中は金利の見直しができないため、仮に住宅ローンの基準金利が下がっても、途中で金利タイプを変更することはできません Rokin

デメリット5(フラット50):総返済額の大幅増加

フラット50のデメリットは、金利が高く、返済が長期に及ぶため、総返済額が増える可能性があることです。毎月の返済額をほかの住宅ローンと比較すると少ないですが、総返済額は多くなるため、慎重に判断する必要があります Lead-home

また、フラット20やフラット35に比べると金利が高い Sbi-efinanceのも、フラット50のデメリットです。

変動金利との比較

金利水準の違い

現在の日本では、変動金利と固定金利に大きな差があります。変動金利は0.3%台から借りられる一方、フラット35は1%台後半から2%台という水準です。

利用者の選択状況

2024年の住宅ローン利用者の実態調査によると、変動金利を選択する人は77.4%でした。一方で、固定期間選択型を選んだ人は13.5%、全期間固定型は9.0%です Fujiken-sumai

圧倒的に変動金利が選ばれているのは、やはり金利の低さが大きな要因です。

どちらを選ぶべきか?

変動金利を選択するとメリットの方が大きいケースは、家計に比較的余裕があり、自己資金が多く、貯蓄などで金利上昇に対応できる人、借入額が少ない、借入期間が短いといった人です。対して、変動金利を選ぶとデメリットの方が大きいのは、住宅ローンの支払いにより家計に余裕がないといったケース、30年、35年といった長期で借りている場合も、金利上昇リスクは高まります。そういった場合、確実に返済できる全期間固定を選択すべきでしょう Zenkyoren

金利ミックス型という選択肢

最近は、変動金利と全期間固定を組み合わせた「金利ミックス型」の利用者も増えています。すべて全期間固定で借りるよりも毎月の返済額が低く、同時に金利上昇のリスクも変動金利のみで借りるより抑えられます Zenkyoren

諸外国の住宅ローン事情

アメリカ:固定金利が主流

アメリカでは住宅ローンは「30年固定」が一般的で、足元では変動金利の利用も若干増えているが、なお1割未満です。これに対して、日本では2022年10月から2023年3月に住宅ローンを利用した者のうち、全期間固定型を選択したのは9.3%に過ぎません NLI Research

日米で真逆の状況になっているのです。

米国における30年固定住宅ローン金利は、2025年11月21日週に平均6.40%となりました TRADING ECONOMICS。日本の感覚からすると非常に高い金利ですが、アメリカでは中古住宅市場が活発で、購入価格より高く売却できる可能性が高いため、多少金利が高くてもローンを組むメリットがあるのです。

ヨーロッパ:国による違い

住宅ローンと不動産の市場には、世界金融危機とパンデミック以降、いくつかの変化がありました。長い低金利時代を経て、多くの国で固定金利住宅ローンの平均割合が高くなっていました International Monetary Fund

ただし、国によって状況は大きく異なります。カナダや日本のような国では、固定金利住宅ローンの割合が低下していることが、住宅を通じた金融政策の波及効果が強まっていることを示唆しています。対照的に、ハンガリーやアイルランド、ポルトガル、米国などの国では、そうした特徴が逆の動きをし、波及効果が弱まったようす International Monetary Fundです。

各国の違いが生まれる理由

アメリカでは基本的に住宅ローンは固定金利で借りて、金利が低下した場合は借り換えればよく、上昇した場合は低利で固定しておくという形で、固定金利を活用しています。年収の数倍となる住宅ローンについて、アメリカでは相対的に高い金利変動のリスクを回避していると言える NLI Researchのです。

一方、日本では90年代以降、長期にわたって低金利が続き、金利上昇を経験しなかったため、変動金利への借換が進んでいきました。

2024年以降の金利動向

日本の金融政策の変化

2024年は日本の金融政策にとって大きな転換点となりました。2024年3月の金融政策決定会合で「イールドカーブ・コントロール」が廃止されて以降、長期固定金利に影響する長期金利については、原則、市場の動きに任される状態になっています Kakaku

現在の金利水準

長期金利は2024年5末時点で1.08%と11年振りに1%台に達しました。その後は1%台を推移していたものの、2024年8月に入ってから1%をわずかに下回る状態が続きました。その後2024年11月には上昇気配となったものの、上昇と下落を繰り返し、2025年10月末には1.67%となっています Recruit Finance

この長期金利の動きに連動して、フラット35の金利も変動しています。

まとめ:自分に合った選択を

長期固定金利住宅ローンは、返済期間によって3つのタイプがあります。

フラット20がおすすめの人

  • 返済余力があり、総返済額を抑えたい
  • 短期間で完済したい
  • 既に土地を所有している、または自己資金が多い

フラット35がおすすめの人

  • 毎月の返済額を確定させて、長期的な家計管理をしたい
  • 子育て世帯で、将来の教育費などの支出が見込まれる
  • 金利上昇リスクを避けたい
  • 自営業やフリーランスなど、収入が不安定な可能性がある

フラット50がおすすめの人

  • 若年層(30歳未満)で長期返済が可能
  • 長期優良住宅を購入したいが、月々の返済額を抑えたい
  • 将来的に収入増加が見込める
  • 住宅の売却も視野に入れている

変動金利がおすすめの人

  • 家計に余裕があり、金利上昇時にも対応できる
  • 借入額が少ない、または借入期間が短い
  • 短期間での完済を目指している
  • 繰上返済を積極的に行う予定がある

結論として、どちらにもそれぞれメリット・デメリットがあるため、どちらがよりお得かというのは一概にはいえません。住宅ローンの返済は長期にわたるため、現在の状況からどちらがお得か判断するのは難しい SMBcのが現実です。

重要なのは、自分のライフプランや家計状況、リスク許容度を冷静に見極めることです。金利の安さだけで判断するのではなく、「返済額が上がったときに対応できるか」「長期的な安心を優先するか」という視点で考えることが大切です。

また、ダブルフラットや金利ミックス型、借り換えなども視野に入れながら、無理のない返済計画を立てることをおすすめします。住宅ローンは人生で最も大きな借入れの一つです。じっくりと検討して、後悔のない選択をしましょう。

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