2026年1月、国民民主党が第51回衆議院選挙に向けた公約を発表しました。前回衆院選で躍進の原動力となった「手取りを増やす」政策を軸に、今回は「『もっと』手取りを増やす」をキャッチフレーズとして掲げ、減税・社会保険料軽減策をさらに拡充しています。
前回衆院選からの経緯と今回選挙への姿勢
国民民主党は2024年10月の衆院選で「手取りを増やす」政策を掲げ、従来の7議席から4倍増となる28議席を獲得しました。その結果、自民党・公明党との協議を通じて以下の政策実現に漕ぎ着けました。
これまでの実績
- 年収「103万円の壁」(基礎控除等)の160万円への引き上げによる約1.2兆円の減税
- 大学生にとっての「年収の壁」を103万円から150万円へ引き上げ
- 50年以上続いたガソリンの暫定税率の廃止決定
さらに2025年12月には、高市早苗首相と玉木雄一郎代表の党首会談で「年収の壁」を178万円まで引き上げることで合意しました。
今回選挙への姿勢
しかし玉木代表は、これらの成果は「全く不十分」と位置づけています。年収の壁引き上げには「所得制限の壁」が設けられ、ガソリン暫定税率の廃止時期も確定していないためです。今回の衆議院解散を「経済後回し解散」と批判しつつも、「戦って何とかその政策を前に進めていく」と決意を表明しています。
「手取りを増やす」政策:所得税・住民税減税
国民民主党公約の最大の柱は「手取りを増やす」ための各種減税策です。
年収の壁の所得制限撤廃
自民党との合意で実現した178万円への引き上げについて、国民民主党は「所得制限の撤廃」を主張しています。現行の合意では年収665万円以下を主な対象としていますが、これを所得に関係なく一律で基礎控除等を123万円から178万円に引き上げることを求めています。
年少扶養控除の復活
民主党政権時代の子ども手当導入に伴い廃止された年少扶養控除(16歳未満の子どもに対する扶養控除)の復活を公約に掲げています。これにより子育て世帯の税負担軽減を図ります。
「令和の所得倍増計画」
消費と投資を拡大する積極的な経済政策で、2035年に名目GDP1,000兆円の達成を目標に掲げています。達成時には税収が120兆円(増税なき税収増)となり、「国の懐より国民の懐を豊かにする」ことを目指します。
消費税・ガソリン税・電気代の軽減策
消費税減税
実質賃金が持続的にプラスになるまでの間、消費税を一律5%に引き下げることを公約としています。ただし玉木代表は今後の賃上げ水準を「よく見定めたい」と述べており、直ちに消費税減税に踏み切るかは慎重な姿勢も見せています。あわせてインボイス制度の廃止も掲げています。
ガソリン税減税
- 暫定税率廃止(25.1円/リットル):ガソリンについては2025年12月31日に廃止が実現。軽油については2026年4月1日から17.1円/リットルの減税を目指す
- 二重課税廃止(約6円/リットル):ガソリン税に消費税がかかる「Tax on Tax」の解消
玉木代表は、国会解散により税制改正関連法案が成立しない場合、軽油の減税が実現しなくなる懸念を表明しています。
電気代の引き下げ
- 再エネ賦課金の徴収停止:電気代に上乗せされている再生可能エネルギー発電促進賦課金の徴収を停止
- 原子力発電所の活用:厳格な安全基準を満たした原発の稼働、リプレース・新増設を推進
社会保険料軽減と就職氷河期世代支援
現役世代の社会保険料軽減
国民民主党は「年収130万円の壁」など社会保険に関する壁についても対策を打ち出しています。
- 後期高齢者医療の原則2割負担:年齢ではなく負担能力に応じた窓口負担への転換
- 公的医療保険の給付範囲見直し
- 後期高齢者医療制度への公費投入増
- 「教育国債」発行による子ども・子育て支援金制度の廃止
子ども・子育て支援金は公的医療保険に上乗せして徴収される仕組みですが、これを「教育国債」に置き換えることで現役世代の負担軽減を図ります。
就職氷河期世代への伴走支援
1990年代後半から2000年代前半に就職活動を行った「就職氷河期世代」への支援策として以下を掲げています。
- 年金の最低保障機能強化
- 年金遡及納付の実現
- 親世代の介護問題支援
- 「個人型確定拠出年金(iDeCo)」の特例検討
- 「求職者ベーシック・インカム制度(仮称)」の構築
- 公務員等への正規就労確保
経済安全保障と「自分の国は自分で守る」
国民民主党の政策第2の柱は「自分の国は自分で守る」です。
主権を守りぬく
- 外国人土地取得規制法の制定:防衛施設周辺以外も対象とした包括的な規制
- 領海・国境・離島対策の強化
- スパイ活動防止対策の強化
国際情勢への対応
- 外国人旅行客への消費税免税制度の見直し
- 入国税(観光税)の課税拡大
- 米国関税対策:自動車需要喚起のための環境性能割廃止を含む税制改革
- 全国交通ネットワーク構築(線路・空路・航路・道路)による人流・物流活性化
食料・エネルギー安全保障
- 食料安全保障基礎支払(10aあたり15,000円+政策加算)による農家の手取り確保
- 米価の安定と食料自給率50%の実現
- エネルギー自給率50%の実現:原子力発電所の稼働・リプレース・新増設、核融合技術の推進
- 高効率火力発電によるカーボン・ニュートラルの推進
人づくり・子育て・教育支援
政策第3の柱は「人づくりこそ、国づくり」です。
若者支援
- 学ぶ若者への奨学金債務減免(最大150万円、教員・自衛官等は全額免除)
- 働く若者(中卒・高卒・高専卒)への所得税減税
子育て世代支援
- 年5兆円の「教育国債」発行で子育て・教育・科学技術予算を倍増
- 3歳からの義務教育化で待機児童ゼロ
- 高校までの教育費完全無償化(給食費・教材費・修学旅行費等を含む)
- 子育て・教育・障害児福祉・奨学金の所得制限撤廃
全世代共通支援
- 「可処分時間確保法」の制定:育児・介護と仕事の両立、リスキリング、勤務間インターバル等の時間確保
- ダブルケアラー・ビジネスケアラー支援
- 空き家や公営住宅を活用した安価な賃貸住宅提供
- 本人・家族が望む最期を支援する終末期医療(人生会議の制度化等)
政治改革:正直な政治をつらぬく
政策第4の柱は「正直な政治をつらぬく」です。
政治資金抜本改革
- 裏金や「非公開かつ非課税のお金」を許さない
- 受け手規制・献金上限規制と徹底した透明化
- 政治資金規正法の再改正
- 政治資金監視委員会による不断の監視
令和の政治改革
- 衆参の選挙制度改革
- 政党法の制定
- 国会改革の断行
- インターネット投票の導入
- 被選挙権年齢を18歳に引き下げ
- 大規模災害などの緊急事態に国会機能を維持するための憲法改正
- 「2対1ルール(One in Two out)」による規制改革:新規の規制や法律を1つ導入するには古い規制や法律を2つ廃止
まとめ:国民民主党が描く「令和の好循環」
国民民主党公約「『もっと』手取りを増やす」は、減税と社会保険料軽減を軸に「令和の好循環」の実現を目指すものです。
公約の特徴
- 手取りを増やして消費を拡大し、売上増加を通じてさらなる賃上げにつなげる好循環
- 2035年名目GDP1,000兆円を目標とした「増税なき税収増」
- 外国人制度の運用適正化と「日本人が払った税金は日本人のための政策に使う」という姿勢
- 与党にも野党にも距離を置く「フリーハンド」戦略
前回衆院選での「年収の壁」引き上げ実績を背景に、さらなる減税の拡大と所得制限の撤廃を訴えています。財源については「経済成長に伴う増税なき税収増」と「税収の上振れ分」で賄えるとしていますが、具体的な財源の明示は限定的です。
玉木代表は今回の解散を「経済後回し解散」と批判しつつも、「政局・選挙最優先ではなく、経済最優先・国民生活最優先の政治に変えていく」と訴えています。与党の自民・維新連立政権と、野党新党「中道改革連合」の両者と距離を置きながら、選挙後も「部分連合」によって政策実現を図る戦略と見られます。
この公約が実際にどの程度支持を集めるのか、他党の公約とどう差別化されるのか、今後の選挙戦での議論が注目されます。


