介護保険制度とは?仕組みから課題まで徹底解説【2026年最新版】

制度

高齢化が進む日本において、介護保険制度は私たちの生活を支える重要な社会保障制度です。しかし「介護保険って具体的に何?」「将来、自分や家族が介護が必要になったらどうなるの?」と疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。

本記事では、介護保険制度の基本的な仕組みから、制度創設の背景、現在抱える問題点、そして今後の課題まで、分かりやすく解説します。

介護保険制度とは?基本的な仕組み

介護保険制度の概要

介護保険制度は、2000年(平成12年)4月にスタートした社会保険制度です。高齢者の介護を社会全体で支え合う仕組みとして創設されました。

40歳以上の国民全員が加入し、保険料を納めます。そして、介護が必要になったときに、費用の一部(原則1割~3割)を自己負担するだけで、様々な介護サービスを利用できる制度です。

加入者と保険料

介護保険の加入者は年齢によって2つに分類されます。

第1号被保険者(65歳以上)は、原因を問わず介護が必要と認定されればサービスを利用できます。保険料は年金から天引きされるか、納付書で納めます。保険料額は市町村によって異なり、所得に応じて段階的に設定されています。

第2号被保険者(40歳~64歳)は、加齢に伴う特定疾病が原因で介護が必要になった場合にサービスを利用できます。保険料は健康保険料と一緒に給与から天引きされます。

要介護認定の仕組み

介護サービスを利用するには、まず市町村に申請して「要介護認定」を受ける必要があります。

認定調査員が自宅を訪問し、心身の状態を調査します。その結果と主治医の意見書をもとに、介護認定審査会が審査し、「要支援1・2」または「要介護1~5」の7段階で認定されます。要介護度が高いほど、利用できるサービスの量(支給限度額)が多くなります。

利用できる主なサービス

介護保険で利用できるサービスは大きく分けて3種類あります。

居宅サービスには、訪問介護(ホームヘルプ)、訪問看護、通所介護(デイサービス)、短期入所(ショートステイ)などがあります。自宅で生活しながら必要なサービスを受けられます。

施設サービスには、特別養護老人ホーム(特養)、介護老人保健施設(老健)、介護医療院などの入所施設があります。

地域密着型サービスには、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)、小規模多機能型居宅介護などがあります。

このほか、福祉用具のレンタルや住宅改修費の支給なども介護保険の対象です。

介護保険制度が創設された背景

高齢化の急速な進行

日本は世界でも類を見ない速度で高齢化が進んでいます。1970年には7%だった高齢化率は、2000年には17%を超え、現在では29%を超えています。

高齢化に伴い、介護を必要とする高齢者も急増しました。1980年代後半から、介護問題は社会的な課題として認識されるようになりました。

家族介護の限界

かつて日本では、介護は家族、特に女性(嫁や娘)が担うものとされていました。しかし、核家族化の進行、女性の社会進出、少子化などにより、家族だけで介護を担うことが困難になってきました。

「介護疲れ」「介護離職」「老老介護」といった言葉が生まれ、介護による家族の負担が深刻な社会問題となりました。中には介護を苦にした痛ましい事件も発生しました。

老人福祉制度・老人医療制度の限界

介護保険制度が創設される以前は、市町村が提供する老人福祉サービスと、医療保険による病院での長期入院が介護の受け皿でした。

しかし、老人福祉サービスは利用できる人が限られており、所得による制限もありました。また、医療の必要性が低いにもかかわらず、介護目的で病院に長期入院する「社会的入院」が増加し、医療費の増大を招いていました。

こうした状況を改善し、高齢者の介護を社会全体で支える新しい仕組みとして、介護保険制度が創設されたのです。

介護保険制度のデメリット・問題点

保険料負担の増加

介護保険制度の最も大きな問題の一つが、保険料の継続的な上昇です。

制度開始当初、全国平均で月額約2,900円だった第1号被保険者の保険料は、2024年度には約6,200円と2倍以上になっています。高齢化の進行に伴い、今後もさらなる上昇が見込まれています。

特に年金生活者にとって、この負担増は家計を圧迫する要因となっています。

サービス利用の地域格差

介護サービスの提供体制には大きな地域差があります。都市部では事業所が充実している一方、地方では事業所が少なく、希望するサービスを利用できないケースもあります。

特に訪問介護や通所介護などの在宅サービスは、事業所の採算性の問題から、過疎地域では撤退する事業者も出ています。

介護人材の深刻な不足

介護職員の人材不足は、制度を揺るがす深刻な問題です。低賃金、重労働、社会的評価の低さなどから、介護職への就業を避ける傾向があります。

厚生労働省の推計では、2040年には約69万人の介護職員が不足すると見込まれています。人材不足により、サービスの質の低下や、介護事業所の倒産・撤退も起きています。

利用者負担の増加

介護保険制度は創設以来、何度も改正されてきましたが、その多くは給付の抑制、つまり利用者負担の増加を伴うものでした。

当初は所得に関わらず1割負担でしたが、2015年からは一定以上の所得者は2割負担、2018年からは特に所得の高い人は3割負担となりました。また、施設入所時の食費・居住費の自己負担化なども進められています。

要介護認定の問題

要介護認定には、調査日の体調による認定結果のばらつき、認定に時間がかかる(申請から約1か月)、認定が実態より軽く出るケースがあるなどの問題が指摘されています。

また、認定調査員の質や経験によって判断が異なる可能性もあり、公平性の確保が課題となっています。

ケアマネジャーの中立性

利用者とサービス事業者をつなぐケアマネジャー(介護支援専門員)の多くが、特定の事業所に所属しています。そのため、自社のサービスを優先的に組み込むなど、完全に中立的なケアプラン作成が難しいという指摘もあります。

介護保険制度の今後の課題

持続可能な財源の確保

最も根本的な課題は、制度を持続可能にするための財源確保です。高齢化の進行により、介護給付費は増加の一途をたどっています。2000年度に約3.6兆円だった介護給付費は、2023年度には約13兆円を超えています。

保険料の引き上げには限界があり、公費(税金)の投入拡大、利用者負担の見直し、給付範囲の適正化など、様々な角度からの検討が必要です。消費税率の引き上げも、介護保険財源の確保が理由の一つとされています。

介護予防の推進

介護が必要な状態にならないための「介護予防」の重要性が高まっています。

地域での体操教室、栄養指導、口腔ケアなど、様々な介護予防事業が展開されていますが、参加率の向上や効果的なプログラムの開発が課題です。健康寿命を延ばすことが、結果的に介護保険財政の改善にもつながります。

地域包括ケアシステムの構築

高齢者が住み慣れた地域で最期まで暮らせるよう、医療・介護・予防・住まい・生活支援を一体的に提供する「地域包括ケアシステム」の構築が進められています。

しかし、地域の実情に応じたシステム構築には、医療機関、介護事業者、行政、地域住民など多様な主体の連携が必要で、その実現には多くの課題があります。

介護職員の処遇改善

人材確保のためには、介護職員の賃金引き上げや労働環境の改善が不可欠です。政府も処遇改善加算などの施策を講じていますが、他産業との賃金格差は依然として大きく、抜本的な改善が求められています。

また、介護職のイメージアップや、キャリアパスの明確化、ICT・介護ロボットの導入による業務効率化なども重要な課題です。

テクノロジーの活用

AI、IoT、ロボット技術などを活用した介護の効率化・質の向上が期待されています。

見守りセンサー、移乗支援ロボット、服薬管理システムなど、様々な技術が開発されています。ただし、導入コストや操作の複雑さ、人間的な関わりとのバランスなど、解決すべき課題も多くあります。

認知症対策の充実

認知症高齢者の増加に対応するため、早期診断・早期対応、認知症の人や家族への支援、認知症バリアフリーの推進などが課題となっています。

2025年には認知症高齢者が約700万人になると推計されており、社会全体で認知症の人を支える体制づくりが急務です。

まとめ:介護保険制度の未来

介護保険制度は、高齢者の介護を家族だけでなく社会全体で支える画期的な仕組みとして2000年に誕生しました。制度開始から25年以上が経過し、多くの高齢者とその家族を支えてきた実績があります。

一方で、急速な高齢化、財源不足、人材不足、地域格差など、多くの課題を抱えているのも事実です。これらの課題に対しては、給付と負担のバランス、介護予防の推進、テクノロジーの活用など、多角的なアプローチが必要です。

2025年には団塊の世代が75歳以上となり、2040年には団塊ジュニア世代が65歳以上になります。介護保険制度が今後も持続可能であるためには、国民全体で制度のあり方を考え、支え合う意識を持つことが重要です。

私たち一人ひとりが、将来介護が必要になる可能性を持つ当事者として、この制度に関心を持ち続けることが大切ではないでしょうか。

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